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管理組合監査について

 監事による監査業務といえば、多くの管理組合では監事が収支決算書類と証憑のみの会計監査のみを行い、監査報告書に署名押印をしていることと思いますが、監事による監査が形式的なものになってしまうと、理事会が知識や経験不足から間違った運営を繰り返すようになった場合、監事の本来の役目である監査業務の役割を果たさず、間違った運営を監事が追認してしまい、更に状況の悪化を招く場合も考えられます。

平成28年3月に改正された標準管理規約によると管理組合の業務を監督するためのものであり、その業務の定めは以下のとおりである。

 

①    監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。

②    監事は、いつでも、理事及び第38条第1項第二号に規定する職員に対して業務の報告を求め、又は業務及 び財産の状況の調査をすることができる。

③    監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。

④    監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。

⑤    監事は、理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令、規約、使用細則等、総会の決議若しくは理事会の決議に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。

⑥    監事は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、理事長に対し、理事会の招集を請求することができる。

⑦   前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監事は、理事会を招集することができる。

尚、管理組合法人においては、区分所有法第50条(監事)に規定されている。

 

2.監事の役割

管理組合の監査を担当するのは、監事であり、監事は、管理組合の業務や財産状況を監督し、その結果を総会に報告することになっている。尚、監事はその立場上理事を兼任できない。

 

3.監査の内容

 監事による監査は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査(標準規約第41条第1項)するため、次の二つに分類される。

 

(1)業務監査

 監事は、管理組合の業務の執行を監査するため業務監査を行う必要がある。業務監査では、総会議案の適否をはじめ、管理規約や使用細則並びに総会決議に従い管理組合が運営されているかどうか、年度当初に計画された点検・清掃及び改修工事等が適切に行われているかどうか等を、理事会への出席や議事録・各種報告書等により確認する。

 

(2)会計監査

 監事は、管理組合の財産の状況を監査するため会計監査を行う必要がある。会計監査では、前年度の総会で決議された予算に基づいて適正に執行され、支払等に関する帳票等に従って適正に処理されているかどうか、各戸の管理費等の額及び未収納金の督促状況等を確かめ、総会に提出される収支報告書(案)及び貸借対照表(案)が適正に作成されているかどうか等を確認する。

 

4.監査項目

 監事による監査は、標準規約第32条(業務)に規定されている管理組合の業務を対象とし、以下に留意して監査を実施する。尚、参考としてチェックリスト(業務監査)を添付する。

 

(1)標準規約第32条に規定されている管理組合の業務

 標準規約第32条第1項には、管理組合の業務として15項目が記載されている。監事は、これらの業務が適切に実施されているかどうかを、管理組合監査主要項目チェックリストの該当項目に留意して監査を実施する。

 

※チェックリストは、一つの例示であり、チェックする項目については、マンションの規模等管理組合の個々の状況を勘案して決定する必要がある。

 

(2)区分所有法に規定されている管理者の業務

 区分所有法に規定されている管理者の業務については、通常、理事長が行う。監事は、区分所有法第26条(権限)記載の管理者の権限、総会の招集、規約・総会の議事録の保管・閲覧及び事務の報告などに留意して、監査を実施する。

 

5.監査の実施、報告及び監査資料

 

(1)監査の実施及び監査報告等

 

①    業務監査

 監事は、管理組合監査主要項目チェックリストの業務監査に記載されている事項等を参考にし、管理組合の業務の執行状況を理事会への出席や事業計画と実施報告書を照合し管理規約等に照らして管理組合の業務が適正に執行されているかどうかを確認する。

②    会計監査

 監事は、チェックリストの会計項目に記載されている事項等を参考にし、前年度の総会で決議された予算に基づいて適正に執行され、支払等に関する帳票等に従って適正に処理されているかどうか、各戸の管理費等の額及び未収納金の督促状況等を確かめ、総会に提出される収支報告書(案)及び貸借対照表(案)が適正に作成されているかどうかを確認する。

 

③    監査報告

 監事は、監査の結果、管理組合の業務に関して理事の職務につき不正行為や管理規約等に違反する重大な事実がないと認める場合並びに管理組合の財産の収支及び財産の状況を正しく示していると認める場合は、監査報告書を作成し管理組合理事長宛提出し、総会に報告する(標準規約第41条第1項)。

 

④    是正処置

 監査の結果、管理組合の業務の執行及び財産の状況に関して不正があると認められた場合、監事は、理事長や理事に対してこれらを指摘し、是正を要請する。これらの指摘事項が是正されない場合など必要と認めた場合には、監事は臨時総会を招集することができる(標準規約第41条第3項)。

 また、監事は、出席した理事会において、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない(標準規約第41条第4項)。

 理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令、規約、使用細則等、総会の決議若しくは理事会の決議に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるとき、監事は遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない(標準規約第41条第5項)。

また、上記の場合において、必要があると認めるときは、理事長に対し、理事会の招集を請求することができる(標準規約第41条第6項)。

 さらに、上記請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、監事は自ら理事会を招集することができる(標準規約第41条第7項)。

 

(2)監査資料

 監事は、監査に当たって、理事長及びその他理事並びに理事長が採用する職員に対し、業務報告並びに必要な証憑・書類や資料を提出するよう要請する。(標準規約第41条第2項)

監査に当たって必要な証憑・書類や資料は、以下のとおりである。

1.前年度の総会議事録

2.理事会議事録

3.管理組合理事長名で発信した書類がある場合はその書類

4.収支決算及び事業報告に関する資料(帳票含む)

5.収支予算及び事業計画に関する資料

6.管理費等及び使用料の額の一覧表

7.管理規約及び使用細則

8.長期修繕計画書

9.資金の借入れがある場合は借入れの残高を証する書類

10.預金残高(管理費会計・修繕積立金会計)を証する書類

11.各種設備点検報告書

12.保険契約等を証する書類

13.管理委託契約書

14.その他必要と認める資料

 

                                                                    以上

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